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第17話
writen by いっと
終わり:物事の最後。すえ。対義語は、はじめ。
終わりを伝えることが俺の使命。俺がすべきことは、終わりを描いてはじめを呼び込むこと。
俺にしかできない、だから俺がやらなきゃいけない。
でも俺は…ちゃんとできたのかな。
「ここは任せときなさいって♪」
圭ちゃん先生。こんなときだってのに、
「純夜くんは、ブエナトロスをちゃちゃーっと♪」
なんてさあ、ノリが軽いよ。
「ああ、分かった、頼むぜ」
確かに俺が相手にすべきはブエナトロス、そいつだけだ。
「ニガスカ!」
バルバロスが俺の行く手を阻もうとにじり寄るが、壁のごとき火柱が、そうはさせんとばかりにほとばしる。
「だから〜、相手はこっち♪」
先生ありがとう。お礼もそこそこに、俺は走った。何かを忘れているような一抹の不安が足を止めようとしたが、終わりは待ってはくれないことを本能的に悟っているんだ。
みんな俺のためにがんばってくれている。
俺もみんなに報いなければならないんだ。
『クルゾ!』
地面がまるで楽器のように揺れ動き、轟音が鳴り響く。足を止めてレェーバテインを強く握り締めたが、俺のリアクションはそれだけだ。そう、そのはずだった。
「な…なに…」
真っ黒い煙を全身にまとったかのような人影、そしてそいつに捕まり、目が覚めるような刃を突きつけられているのは…。
「沙季!」
忘れていた。なんでそんな大事なことを忘れていたんだ…!
「ごめんね、純夜。…私のことはいいから」
みんなそう言う。でもな、俺にはほっとけないんだよ。
「コレデ、ナンドメノチコクカナ?」
内臓にまで伝わる振動。
人影は、歪んだノイズのような声で俺の怒りに油を注いだ。
「おい…。沙季を離せ」
『チョウハツニノルナ、オモウツボダゾ!』
沙季しか見えない。沙季の言葉しか聴こえない。
「イヤダト イッタラ?」
ただの幼馴染。そう思っていた。でも、違ったよな。本当に大切なものって実は思ってるよりずっと近いところにあるんだってことに、なんで気づけなかったんだろうな。
沙季、…俺はずっと前から…。
「純夜!私にかまわないで!」
「ケナゲダネエ。ミテルト、ツブシタクナルクライダ」
いつも突っかかってきたんだ。遅刻したときなんか、毎回意地悪言ってきてさ。生意気だったよ。でも。
『オチツケ!イマオマエガナスベキコトヲカンガエロ!』
俺にとって、沙季は…。
「…純夜!…私、実はずっと前から」
―――――刺さった。…や、刃が。
「イワセルトデモ オモッタノカナ。ケナゲヲコエテ、タダノバカダロ」
…さ、沙季に。沙季に。沙季に。沙季に。沙季に。
「バカハ シナナキャナオラナイ、ッテナ。コリャケッサクダワ」
―――いや、違う。そうじゃない。そんなはずじゃないんだ。俺が描く終わりっていうのは―――
ガキーン!
「ナ、ナンダト」
鋭い金属音だった。気を取り直して、前を向く。黒い人影がひるんで沙季を解放していた。
「な、何が起こったんだ…」
『ナニヲイッテル、オマエガヤッタンダロウ!ハヤクトドメヲサスンダ!』
手元にあったレェーバテインが無くなっていた。どういうわけか、人影の持っていた刃と一緒にどこかに弾き飛ばされたらしい。
「とどめを刺すって…」
―――多分、こんな感じのはずだ―――
人影に飛び込んだ。俺は無意識に、それをやっていた。
「ギャア!ギャアアア…」
人影と体が重なったとき、俺から明るくまぶしい光がこぼれだした。
次第に白が黒を侵食し、地面に溶けるように影が小さくなっていく。
耳を劈く悲鳴にも、ただただ呆然として俺は立ち尽くした。
「一体、何がどうなって…」
『ハヤク サキヲ!』
「あ、ああ!」
傍らに倒れている沙季。魂に気付けの一声をもらい、大急ぎで抱え起こした。
「…純夜…」
「沙季!」
なぜだか分からない。だが、突き刺さった刃が作ったはずの傷が、やっぱりどこにも見当たらないのだ。
―――これで正しいはずなんだ。きっと―――
空ってこんなに青かったのかな。いっつも愛車で大急ぎだから、気づかなかったのかも。
「純夜、このままじゃ遅刻よ〜!」
自転車で横を走る沙季が叫んでる。
「お前のほうこそ」
ちょっと無理して追い抜いてやった。
「分かってないわね〜。祐希!」
呼ばれた悪友がいきなり飛び出てきた。自転車で。
「任せなさい!」
言うなり祐希は念仏を唱え始める。徐々に祐希と沙季の姿が透け始めた。
「お、おい、どういうつもりだよ」
「あんた、何習ってるつもりなの?」
な、何って…。
「“魔法”だよ、クラッシャー上杉!」
悪友よ、お前のメガネを壊して勉強できないようにしてやろうか。
「じゃ、一足先に学校で待ってるからね〜」
沙季の放った言葉を残して、…さらに言えば俺を残して、二人は自転車ともども消え去ってしまった。
「またユリッチに殴られるよ…」
もう少し俺に優しくしたってバチ当たんないぜ、あんたら。
沙季を助けたあと、まもなく世界の切り離し作業が始まった。
『純夜、本当にすまなかった。お前には何一つしてやれなかった。その上、こんなことをさせてしまって…』
「…父さん、謝んないでよ」
『純夜…』
「母さんにもちゃんと話したよ。こっちのことは俺に任せて」
『…知らない間に大人になってたんだな』
「…つい最近だよ。とにかく」
『ああ。時間もあまりない。悠長にしてるとまた魔物が来てしまうからな』
「グラスにもよろしく言っといて」
『分かった。声を借りているうちは意識がないらしい。あとでちゃんと伝えておく』
「…じゃあね、父さん」
「純夜、…本当にありがとう」
切り離しは上手くいった。圭ちゃん先生、ユリッチ、藤田たちにも再会できた。
そう、何事も思い通りに進んだ。それはもう、俺の思い描いたように。
…?
思い描いたように。そうだ、まるで、そう。
俺が自分で物語を、自分で終末を導くように。
そういうことだった。俺の本当の力。力というか…よく分からないんだけど、とにかくこの物語を書いていたのは俺だ。
人影、ブエナトロスの刃に確かに刺された沙季。あいつを救えたときに、やっと気づいたんだ。
いろんなやつに筆を助けられながらも―――時には俺の思ったとおりにことは進まなかったが―――俺はこの一筋の物語を書き上げることができた。
この終わりが正しい形に導かれたのか、俺には分からない。ただ、俺にしかできないことを俺はやった。
そして、俺ははじめを呼び込むことができたんだ。ああ、ここからの物語は俺には書けない。
ここから始まるのは、筋道のない無限の広がりだからね。
「ギリギリセ――フゥ!」
「遅刻だ!バカ野郎!」
了
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