AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
第2話
writen by みなっきー
この学校の壁や床には、魔法緩衝材が用いられている。
魔法緩衝材とは、文字通り魔法の力を拡散・吸収する素材のことだ。
これで万が一魔法の暴走が起きても、被害を抑えることができる。
…って聞いていた。

「あァ〜今日もダルかったァ〜」
グッと背伸びをすると、背骨が軽く鳴った。
「紗季、帰ろうぜ」
「帰ろうぜ、じゃないわよ。あんた放課後に呼び出しくらってたでしょ?1限のアレで」
「あ…忘れてた…」
「ほんとバカね」
紗季が哀れみの眼差しを向けつつため息を吐いた。
機械学ならお前より断然上だっての。
と思いつつ、大人な俺は口には出さない。
「よぅ。クラッシャー上杉!これから職員室か?職員室も壊さないように気をつけろよ」
どこから現れたか、祐希が俺の机の上に座り、楽しそうに笑っていた。
「…先にお前のメガネを壊して、勉強出来ないようにしてやろうか?」
「大丈夫。メガネがなくても俺が学年トップである事は変わらない」
コイツの場合、本気で言って、それが事実だからムカつく。
「でも、教室半壊させたのはマズかったよなァ…」
「我が友よ。短い間だったが、ありがとう」
「純夜。あんたが退学になっても、私があんたの分まで青春をエンジョイするから安心して」
「…笑えない冗談はやめてくれ」
そう。俺は1限の魔法科学の実技テストで教室を半壊させた。
火の魔法陣を召喚しようとしたら、大爆発が起きてしまったのだ。
幸い先生の魔障壁のおかげで、ケガ人は出なかったのだが…。
「気を落とすな。誰にでも失敗はある」
「お前にだけは言われたくねーよ…」

俺は紗季、祐希と別れ足どり重く職員室に向かった。
途中窓から紗季が部活に向かう姿が見えた。

コンコン。
「失礼しま〜す。高崎先生いますか〜?」
「上杉くん?こっちこっちィ〜」
高崎先生は自分の席から、手を振って俺を呼んでいる。
なんか職員室って緊張してしまう。
今回は退学も覚悟、いや退学を言われた時の土下座も覚悟だ。緊張は仕方ない。
「はい。補習用の宿題ねェ。魔法式の書き取り100式。明日までにねェ?」
「へ?」
俺は一気に肩の力が抜けた。
なんだ宿題だけか…。
思わず安堵のため息がでた。
「あ。何ため息ついてるのォ?あの基礎テストもできないのは、ちょっと問題よォ?」
先生はちょっと厳しい顔を向けた。が、すぐにアレ?っと首を傾げて、
「もしかして、修理費の請求とか停学とかと思ってたァ?」
「!!…」
「図星ィ?」
何てするどい人なんだ。高崎圭女史、侮りがたし…。
「いくら校舎を壊したといっても、テスト中の事故だったんだから仕方ないわよォ。それよりも、今日みたいに失敗しないように、しっかり勉強しないとダメよォ〜?」
「ありがとうございます!」
俺は嬉しくなり、思わず大きな声が出てしまった。他の先生が驚いたように、俺を見ていた。
「はい。じゃあ頑張ってねェ、上杉純夜くん?」

先生は俺を廊下まで見送りに来てくれた。
「あら?霧島さんに渡部くん?どうしたのォ?」
職員室をでると紗季と祐希が、深刻そうな顔で立っていた。
紗季は部活の途中だったらしくジャージ姿だ。
「先生…」
紗季が重い口を開いた。
「純夜を退学にしないで下さい!」
「純夜はバカだけど、良いところもいっぱいあるんです!例えば…………とにかくいいヤツなんです!」
俺と先生は驚いて、顔を見合わせたのち、笑った。
紗季と祐希はキョトンとした顔で、顔を見合わせた。

「あ〜あ。せっかく部活抜けて来たのに、とんだ無駄足よ」
「本当だ。今日ゲームの発売日なんだぞ?」
「悪かったって、でもありがとうな」
俺は素直に礼を言った。
この2人とは一生付き合っていける。
「恩を売りそびれたわね?」
「あぁ。一生こき使えると思ったのにな」
前言撤回。コイツらとは、いいところで縁を切らないと。
「じゃあ、私部活戻るわね」
「おぅ。陸上部のエースとして頑張れよ〜」
「あんたに応援されるほど、堕ちてないわよ」
ムカつく女だ。

屋上から2人の女性が校庭の3人を眺めていた。
「高崎先生。あの子をそのままにしておいて大丈夫ですか?」
男の声が響いた。
「教師は生徒を守るのが役目。今、あの子を放って置いたら、あの子のためにも、我々のためにもなりませんよ?」
高崎先生は静かに口を開いた。いつもののんびりした口調とは違っていた。
「ですが、あの歳であそこまで魔法緩衝材を破壊。その上、あなたが自身と生徒しか守れないほどの速さで発動。尋常じゃありません」
「藤田先生。それを制御するのも我々の仕事ですよ」
「今宮先生まで…。ですが、私にはこの処置は納得いきません!」
藤田と呼ばれた男は、踵を返して屋上をあとにした。
「…あの子の力がここまでなんてな。圭、気付いてたか?」
「何か秘めてるとは思ってたけど…ここまでとは予想外ね。これから忙しくなりそうね、ユリッチ」
「…ユリッチは止めろ」
2人はいつまでも、3人を、いや上杉純夜を眺めていた。




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