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第13話〜後編
writen by みなっきー
「ってぇ〜…。舌噛んだァ〜」
俺はいつの間にか建物の中にいた。
ゴツゴツした岩肌は、キレイなタイルになっていて、よく見ると、壁や柱には複雑な装飾が施されているのがわかる。
まるでお城みたいだ。
ただし、薄暗くて数m先はほとんど見えない。
「ここは…」
「ブルーニュ宮殿。地下に造られた俺達のアジトだ」
声が響く。足音も。
「誰だ!」
「大声を出すな。うるさい」
声がどんどん近づいてくる。
同時に恐怖が湧き上がってくる。
ここはデブリスだ。魔物の世界に今一人でいる。
「おい!グラス!どうなってるんだ!だんまり決め込むなよ!おい!」
「だからうるさい。俺はここにいる」
「……え?」
一瞬意味が分からなかった。俺はグラスに話しかけて、でも前から近づく声が答えて……。
まさか…。
「お前がグラス…なのか?」
「この場合、はじめましてか?」
今、俺の目の前にいるのは魔物ではない。そして、そいつは…。
「……女?」
「だからどうした」
そいつは紛れもなく、人間の女だった。
ただ腰まである純白の綺麗な髪だけが人間離れしている。
「グラスファリア・ローヴェル・ゼーテだ」
「グラス……女?」
「そんなに意外か?」
「けど、頭に響いてた声は…」
「声帯を通してないんだから、男声も女声もないだろう?少しは考えろ」
表情ひとつ変えずに淡々と話すグラス。
「奥にお前を待っている人がいる。ついてこい」
そう言うと、カッカッと先を歩きだした。
俺も置いていかれないように後を追う。
階段を上って、廊下を渡り、階段を下りて、また廊下、階段と一人じゃ絶対に迷子になる道をズンズン進む。
その間も会話は少しも交わされない。
なかなか話しかけれる雰囲気ではないからだ。
それでも俺は恐る恐る口を開いた。
「なぁ、グラスって、あんまり喋るの好きじゃない?」
「…無駄な体力を使うだけだ」
「……そうか」
やっぱり。
「だが、嫌いではない」
「そうか」
少し嬉しかった。


「ここだ」
急に立ち止まったので、グラスの背中にぶつかってしまった。
「ゼーテだ。入るぞ」
返事を待たずに戸を開いて中に入る。
部屋の壁には本棚がびっしりと並び、本棚に収まりきらない本が無造作に積まれている。
部屋の奥には広めの机があり、そこに誰かいるようだ。机にも本が積まれていて、どんな人かは確認できないが、何かに没頭している。
「上杉純夜を連れてきた」
没頭していたその影が、ピクリと動きを止めた。
かすかに見えてた隙間に手を突っ込み、一気に横に払い、机の上の本をどかす。
「…純夜」
俺の名前を馴れ馴れしく呼ぶ。でも、そこにいる人は知っている人、そして、いるはずのない人だった。
「……父さん?」
写真でしか見たことがないものの、紛れもない、死んだと聞かされてた父親の姿がそこにあった。
「あぁ…。純夜…。デカくなったぁ…」
父さんは眼鏡ごしに涙を浮かべながら、俺を見ていた。
「惣一郎。感動の再開はいいが、今は」
「あぁ、分かってるよ、ゼーテ。純夜、掛けてくれ」
父さんが涙を拭いながらパチっと指を鳴らすと、どこからともなく椅子が現れた。
俺はわけがわからないまま言われる通りに座った。
「さぁ。どこから話をしようかな…。うん。まずはこの世界の事からか。いいかい、純夜。この世界、君らは『デブリス』って呼んでる世界だね、ここと君らの世界はもともと同じ世界だった。だが、今から116年前、人は科学を追究しすぎたがゆえに、自然の理を歪めてしまった。暴走した自然の力は人間の科学力を上回るもので、人はなす術を失った。そこで、当時、科学魔法研究室の主任だった僕と、副主任だった彼女、ゼーテで研究を重ね同じ時間軸上に、別の空間を作り出す事に成功した。そして僕らはそっくりそのまま同じ世界を作った。その後――」
「ちょっと待ってくれよ!」
俺は耐え切れず叫んだ。
「めちゃくちゃだ!116年前とか、世界を作るとか!だいたい人が生きれる長さじゃない!」
「…僕らはもう、人ではないということだよ」
父さんは少し悲しそうに言った。
「その後僕とゼーテは元の世界に残り、この世界を元に戻そうと試みた。そして新しい生物を作った。それが魔物だ。同時に僕らも自らを魔物化し、命を繋いできた」
「…そんな」
俺は愕然とした。父さんが魔物を作り出した…。そして自分も魔物に…。
父さんは俺の方にきて、そっと俺の頭を撫でた。
「母さんに出会ったのは、この世界でだ。母さんが誤ってこの世界に紛れ込んでしまった時にね。僕と母さんは愛し合ってしまった。そして、母さんがあちらの世界に帰ったあと、君が生まれた。魔力値で分かったよ。人間がこんな高い魔力を収容できるはずがない。僕の子だって。高い魔力の代わりに、体がブレーキをかけてしまってコントロールが上手くいかなかったみたいだけど」
顔をあげると、父さんが優しい笑顔を向けてくれていた。
「…俺、そのせいで魔法の授業苦労したんだぜ?」
「あぁ、すまなかったね」
何故かはわからない。けど、自然と涙が溢れてきた。
「この世界はもう元には戻らない。だが、僕らの罪、魔物を作り出したことは、償う必要がある。魔物は自ら繁殖し、数を増やしていってる。この世界のみなら問題ないが、最近は魔力値の高い魔物が増えてきている。さらに知恵までついてきてね。以前までなら藤田恭祐に任せていれば、問題なかったんだが」
「藤田恭祐って…、藤田先生の事?」
「彼もこの世界にやってきた人間だ。母さんとは違い自らの意思でやってきて、無理やり契約したから、右目を取られちゃったんだ。若気の至りっていうのかな。もとの世界に帰す代わりに、魔物退治を手伝ってもらってる」
今の厳格な藤田先生からは想像できない…。
「話を戻そう。今のままじゃ、あっちの世界が魔物で埋め尽くされるのも時間の問題だ。そこで、僕はこの2つの世界を切り離すことに決めた。本当はこの世界が正常になったら、また世界を一つに戻すつもりだったんだけど…。そうは言ってられない。そして、魔物も僕らの動きに気付いている。僕はここで世界の切り離し作業に集中する。その間、純夜には向こうの世界で魔物を迎え打ってもらいたい」
「と言う訳だ。本題までえらく時間がかかったな」
今まで部屋の端で話を聞いていたグラスが口を挟んできた。
やっぱり表情は変わらない。
「あんまり長居すると、魔物に嗅ぎ着かれる。さ、帰るぞ」
「ちょっと待て!俺はまだやるともなんとも言ってないぞ!」
グイグイと腕を引っ張って俺を連れて行く。
「どうせ、やるつもりだったんだろ?」
「だけど、世界を切り離したら父さん達は…!」
元の世界に戻れない。
だけど父さんは優しい笑顔で頷いた。
「僕らも魔物なんだ。魔物をそっちの世界に残す訳にはいかない」
「そんなの納得いくわけない!父さんが魔物なら、俺も魔物の血が混ざってる!俺も残―――」
「純夜!!」
父さんの大声が俺の言葉を切った。
「母さんを頼んだよ」
「……あぁ」
俺は再びグラスに腕を引かれ、その場をあとにした。
俺の言葉を遮った父さんの目には涙が光っていて、だけど顔には穏やかな笑顔を浮かべ、その言葉には有無を言わさない重さを感じた。
「グラス…」
「なんだ?」
「…父さんを頼んだよ」
グラスは振り向きもせず、ただ「あぁ」とだけ短く答えた。



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